Report on GPS/DGPS Symposium

日本航海学会 主催 シンポジウム

「 GPS/DGPS利用技術の展望 」報告

Report on " Symposium on Application of GPS/DGPS to Navigation "
Japan Institute of Navigation ( JIN )

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シンポジウム実行委員長
 安田 明生

  1. まえおき
    日本航海学会主催のシンポジウムは学会の主要行事として3年に1回各研究会持 ち回りでおこなわれており、前回の「これからの船舶運航技術と船員」が平成 6年9月に開催されているので、順当ならば平成9年度に開催されるべきであ る。しかし、平成10年度は日本航海学会創立50周年にあたり、盛大な記念 行事が予定されているので、その前年のシンポジウム開催は学会としては負担 が大き過ぎるということで、変則的に平成8年度に開催の運びとなった。もう 一つ変則的なこととして、研究企画委員会から最近各方面で関心が高まってい るGPSに関するシンポジウムをという提案がなされ、今回は特にどの研究会に ということではなく、最近GPSに関する論文を本学会論文集に何編か寄稿して いる安田が中心となって実行委員会を組織するよう に依頼された。

  2. 実行委員会の組織
     そこで、近年、日本航海学会論文集、航海学会誌「NAVIGATION」に掲載され たGPSに関する論文の著者で関東地区の会員の中から、北條晴正氏(日本無線 研究所)、木村小一氏(DXアンテナ)、惟村和宣氏(電子航法研究所)、織田 博行氏(三井造船昭島研究所)、今津隼馬氏(東京商船大学)に実行委員をお願い した。関東地区の会員をというのは、参加者を多く集めるためにはシンポジウ ムの会場は首都圏が良かろうと云うこで、その際経費を節約するために実行委 員会の旅費を切りつめようという理由からであった。従来、多額の補助金を支 出していただいていた海洋振興会からの補助は今回は得られなかった。GPSは 陸海空にかかわりなく広く利用されており、地震予知に関連して搬送波測位方 式を利用した地核変動監視システムが日本全土に張り巡らされ、この分野の研 究はかなり以前から進められているが、航法に関する組織的な研究はあまりな されていない。そこで航海学会の守備範囲としては陸海空の航法を中心に扱う のが良かろうということになった。上記の実行委員の他に陸の領域をカバーし てもらうために非会員ではあるが、カーナビゲーションに関連してVICS推進の 中心をなす伊藤徹氏(トヨタ自動車東富士研究所)に参加をお願いした。

  3. 会場
     会場は、主として経費節減のために、平成8年7月に改装工事が完了したば かりの東京商船大学旧2号館、通 称越中島会館の講堂を充てることにした。同会館は交通の便も良く434名収容 の講堂と4つのセミナー室や何室もの集会室などがあるので、参加者が多数の 場合には休憩室などに使えて便利である。講堂のいすはゆったりしており、折 畳式のテーブルが備えられてるので、テキストを開いたりメモを取ったりする こともできる。一階は軽食堂や売店、自販機コーナー、ロビーなどがあり参加 者には何かと好都合な環境が整っている。しかし、従来のシンポジウム参加者 は100名前後だったので、434名収容の講堂がどこまで埋まるかという懸念はあっ た。

  4. 協賛学協会
     そのため多くの関連学会や協会に協賛を依頼し、次の42団体からの協賛を得 た。衛星測位システム協議会、外航中小船主協会、海上保安協会、海洋会、海 洋調査技術学会、海洋調査協会、関西造船協会、漁船協会、計測自動制御学会、 GPSフォーラム、舟艇協会、全国内航輸送海運組合、船舶整備公団、テレビジョ ン学会、電子情報通信学会、電気学会、東京湾海難防止協会、土木学会、日本 沿岸水先人協会、日本オーナーパイロット協会、日本海事公報協会、日本海事 新聞社、日本海洋学会、日本海難防止協会、日本計量協会、日本航海士会、日 本航空宇宙学会、日本港湾タグ事業協会、日本地震学会、日本水路協会、日本 船主協会、日本舶用機関学会、日本船舶機関士協会、日本船舶電装協会、日本 船舶標準協会、日本船長協会、日本造船学会、日本造船研究協会、日本舶用工 業会、日本測地学会、日本測量協会、農業土木学会。

  5. テキスト内容
     テキストはスタイルを統一するため著者からはテキストファイルの形式で提 出してもらい、TEXを用いてスタイルを設定し、プリントアウトした。図表や 写真等は貼り付けてカメラレディーの形で印刷屋に提出し、経費の節約を図っ た。索引も含め本文だけでA4サイズ164ページにもなった。テキスト印刷発注 時の参加申込数は200以下だったが、諸事情を考慮し、足らないよりはと思い 400部発注した。以下にテキストの概要を紹介する。
     第1章はGPSとDGPSについて共通の認識を持ってもらうため、その測位原理についてを安田が担当した。GPS衛星の運用状況、測位計算法、測位誤差分布と衛星配置の関係、測位誤差の原因とその補正方法、GPSのインテグリティ、DGPSの原理、DGPS補正データ放送の概要、RTK−GPSの測位原理などが記されている。
     第2章はGPSとDGPS受信機の動向についてを北條氏が担当した。最近の受信 機ハードウエア構成と機能に関しては、GPSアンテナや高周波部、ディジタル 処理部の各構成要素についてが詳述され、さらにDGPS受信システムの現状が陸 上、海上、航空別に記されている。また、電子技術の発展による、高性能化、 小型化等最近の技術動向についても記されている。
     第3章は海上および沿岸における利用についてを織田氏が担当した。操船制 御における利用では海上公試運転における利用や離着桟操船と位置制御におけ る利用の現状、沿岸開発における利用では沿岸工事や海中測位における利用例、 海洋観測における利用では潮流潮汐等の測定における利用、さらに姿勢計測に おける利用では搬送波測位方式を用いた実時間の3次元姿勢計測装置と応用例 についてが記されている。
     第4章は船舶航行における利用についてを今津氏が担当した。船舶航行にお ける位置精度基準とGPSではIMOにより検討されている各航行局面における精度 基準を紹介し、それを満たせるものは現状ではGPSやDGPSのみであることから、 ECDISやトラックコントロールシステム等の航海装置への積極的な導入動向に ついてが記されている。さらに船舶通信における自動識別や航海データ記録装 置、GMDSSに関連して救難援助装置への適用が進んでいることが記されている。
     第5章は航空分野における利用についてを惟村氏が担当した。現用航空航法 システムとGPS、DGPSの誤差比較では、GPSは従来の装置に無い高精度の測位シ ステムであること、さらにICAOによる精密進入のカテゴリが紹介されている。 また静止衛星を使ったGPS広域補強システムとして開発中のWAAS(米国)、 EGNOS(欧州)、MSAS(日本)の現状と、滑走路進入のための狭域補強システ ムとしてのDGPSの適用例、またカテゴリ検証のためのRTKの実験例などが示さ れている。
     第6章は自動車における利用についてを伊藤氏が担当した。近年急速に普及 しているカーナビゲーションシステムの特徴と基本性能等が紹介され、さらに 渋滞状況に即応するルート案内等交通管制の最適化を目指して開発中のITSに おけるGPSの果たす役割等についてが述べられている。また、平成9年度より 開始予定のFM多重によるDGPSデータ放送の概要及び精度評価実験の結果、さら には今後の広い応用展開の可能性についても記述されている。
     第7章はGPSをめぐる動向と将来展望についてを木村氏が担当した。軍事用 測位システムとして開発されたGPSが民間用への応用が認められるに至った経 緯や、GPSをめぐる政策、外交戦略などの各種調査機関の報告や勧告が紹介さ れている。また、10年以内の精度劣化操作(SA)の解除と将来にわたるGPSの 民間利用を約束した1996年3月の大統領指令文書の紹介および次世代のGPS衛星 やGLONASSについても触れられている。
     また、付録として、木村氏によるGPS関連の図書や文献の紹介、インターネッ トやパソコン通信によるGPS情報の収集や意見交換の場も紹介されている。
     校正が十分でなく、印刷後にかなりの誤りに気づき、正誤表を配布すること となった。多々ご迷惑をお掛けしたことを陳謝致します。

  6. シンポジウム講演会当日
     シンポジウム講演会は平成8年11月29日(金)9時から受付開始、同時 に展示会もオープンした。前日までの参加申込者約250名の内、かなりの方の 参加費支払いが当日になっていたことと当日の参加申し込みやテキストの購入 希望が50近くもあったことなどで受付は大変混乱した。
     講演開始は10時、各章の持ち時間は40分ずつで、おおむねテキストにした がって熱のこもった講演が行われ。講演終了後質問時間を若干取ったが、時間 が短く盛り上がりに欠けた感があり、反省材料としたい。
     図や表は(株)エルモ社からご貸与いただいた高照度のOHPプロジェクタを 用い、舞台上の3×4mの大スクリーン上に室内の照明を暗くすることなく明 るく映し出すことができ、講堂のすみずみからもはっきり見ることが出来たと 好評であった。
     昼休みは12時から2時間取り昼食と展示会の見学に充てた。午後はコーヒー ブレークをとり、湯茶を無償で提供した。空調の状態が悪く、前方からは寒い、 後方からは暑いという苦情が再三出されたが、対応しきれなかった。

  7. 展示会
     GPS受信機の製造メーカーや輸入代理店、GPS関連のアプリケーションソフト 開発や取り扱い業者などの協力を得て、越中島会館セミナー室における製品の 展示とグランドを使ってのデモを行った。シンポジウム参加者はもとより、展 示社側にも多くの熱心な見学者に大層満足していただいた。展示の見学者はシ ンポジウム参加者を含み約350名であった。

  8. 会費について
     前回のシンポジウムの会費が7千円だったことと今回は特別の補助が得られ なかったこともあって、8千円(非会員は1万円)に決まった。またテキスト も従来のパターン(高めに設定してテキストのみよりは参加者を多く集める) を踏襲して4千円と決まった。参加者は200名に達すれば上々と思っていたが、 当日は300名近い参加者が集まり、400冊のテキストもほぼ完売(2月上旬 現在)と収入は予想を大きく上回った。アンケートの結果では参加者の会費に 対する割高感は余り無かったが、学生会費4千円は少し高いのではないかとい う指摘もあり、これも反省材料としたい。

  9. あとがき
     米国や欧州ではすでに数年来、GPSに関連したシンポジウムや研究会が大規 模に開催されており、我が国からの参加者も多い。恐らく日本ではGPSという キーワードのみで括られたものとしては今回のシンポジウムが最初のそして最 大のイベントではなかったかと思われる。しかし、今回このシンポジウムを開 催して、我が国においてもこの分野への関心が強いことに驚かされた。アンケー トにお答えいただいた大多数の方が、次回も同様のシンポジウムへの強い参加 の意志を示されている。日本航海学会が中心となってその声に応えることがで きればと思う。
     今回のシンポジウムは表面的には成功であったと実行委員の一人として自負しているが、この成果を踏まえて継続的にこのような会合を開催し、我が国におけるGPSおよび関連した分野の健全な発展に寄与できてこそ本当の成功を謳うことができると思う。
     最後に、今回の成功は強い関心を持ってご参集いただいた参加者諸兄、展示 にご協力いただいた各企業・団体の方々、シンポジウムの準備、会場の準備、 当日会場の受付や整理を担当してくれた学生諸君の協力の賜物であることを記 し、謝意を表します。


    Copyright by Hiromune NAMIE

    1997年 5月 27日 作成